THINK DIFFERENT

FESTINA LENTE

草薙龍瞬(2015)『反応しない練習』KADOKAWA。

◆概要

【想定読者】

悩んでいるすべての人

 

【主張】

正しく考えることで、どんな悩みも必ず解消できる、それがこの本があなたに一番伝えたいことです。(p.1)

 

心がつい動いてしまうこと、それが悩みを作り出しているたったひとつのことなのです。だとすれば、すべての悩みを根本的に解決できる方法があります。それは、無駄な反応しないことです。(pp.2-3)

 

◆本文抜粋

○反応する前にまず理解する

順を追って理解していくことで、どんな悩みを確実に解決できるというのが、仏陀の合理的な考え方です。(p.16)

 

仏教の世界では、苦しみの原因は執着にあると、よく語られます。(中略)執着以前に、悩みを作り出しているものがあるのです。それが心の反応です。(中略)となると、私たちが日々心がけなければいけない事は、1つです。ムダな反応しないことです。(pp.21-22)

 

【心は求め続けるもの】大切なのは、「心とは、そもそもそういうものだ」と理解しておくことです。(p.28) memo.エヴァ最終回

 

memo.心の状態を言葉で確認する、体の感覚を意識する、頭の中を分類する/貪欲、怒り、妄想

 

○良し悪しを判断しない

人間の心には、例外なく、判断しすぎるところがあるのです。(p.52)

 

判断する心には、わかった気になれる気持ちよさと、自分は正しいと思える(承認欲を満たせる)快楽があるのです。(p.53)

 

むしろ「自分が正しい」と判断してしまった時点で、その判断は「間違ったもの」になってしまうのです。(p.65)

 

人間というのは、一部しか見ていないにもかかわらず、全てを理解した気になって「自分が正しい」と思い込んでいる、と言うことです。(p.66)

 

仏教が目指す「正しい理解」とは、逆説的な言い方になりますが、「正しいと判断しない」理解です。(p.67)

 

仏教的には、どんな状況であれ「怒りを作り出さない」と言う方針に立つことです。(p.76) memo.セネカ

 

過去の成功をもとに「自信がついた」といっても、その自信は、次の状況には通用しないものです。という事は、あらかじめ「自信を持つ」と言うのは、現実には不可能なのです。(中略)自信なんて、考えなくて良いのです。(p.87)

 

○マイナスの感情で損をしない

反応しないことが最高の勝利である。(中略)仏教における勝利とは、相手に勝つことではありません。「相手に反応して心を失わない」ことを意味するのです。(p.100)

 

相手と自分の反応分けて考える。相手の反応を相手に委ねる、これが、人間関係で悩まないための基本です。(p.102)

 

○他人の目から自由になる

妄想には確かめるすべは無い(p.132)

 

【承認欲について】ただ、それは「モチベーション」(動機)として利用するだけです。「目的」そのものにしてはいけません。(p.148)

 

○正しく競争する

競争の中を、違うモチベーションで生きる(p.165)

 

勝ち負けや優劣を競わせる社会の情報や価値観は、厳密に言えば「妄想」でしかありません。(p.168)

 

難しいのは、「捨心」かもしれません。というのは、「執着」があるからです。(p.174)

 

脚下照顧、足元を見ると言う生き方です。足元を見て、できることを積み重ねる。改善を重ねていく、こういう努力は、自分の内側だけを見て、今立っている場所からスタートすれば良いので、とても楽だし、自然です。もはや嫉妬とは無縁になります。(p.196)

 

○考える基準を持つ

自分自身の心の内側に、奥底に、正しい生き方、拠り所、確立しなければいけない。(p.208)

 

これからの人生を信頼する(p.210)

 

人間は皆、望むようには生きられない現実に苦しんでいる。ならば、その現実に苦しまない心の持ちを目指そう。(p.214)

 

ブッダが教えるのは、現実を「変える」ことではありません。「闘う」ことでもありません。現実は続く。人生は続いていく。そうした日々の中にあって、せめて自分の中に苦しみを増やさない、「納得できる」生き方をしよう、そう考えるのです。(p.217)

 

戻るべき心の場所、拠り所さえ見つかったなら、後は「時間の問題」です。(中略)きっと「最高の納得」へたどり着けることでしょう。

(中略)

生きてまいりましょう。(p.222)

 

◆参考文献・引用元

草薙龍瞬(2015)『反応しない練習    あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」』KADOKAWA

 

◆所感・BJ後追記済

仏教の考え方を元にしたマインドセット本。人間の心の有り様を理解し、その上で諦めと肯定感の両立を提案しているように感じた。

 

 

『自省録』『怒りについて』にも似た考え方、記述がある。

 

Marcus Aurelius Antoninus(2C), "Ta eis heauton"(神谷美恵子訳(2007)『自省録』岩波書店。)より

【捉え方】自分に起こったことを悪い事と考えさえしなければ、まだ何ら損害を受けていないのだ。そう考えない自由は私にあるのだ。(p.120)

【無関心】最も高貴な人生を生きるに必要な力は魂の中に備わっている。ただしそれはどうでも良い事柄に対して無関心であることを条件とする。(p.217)

【主観】すべては主観にすぎないことを思え。その主観は君の力でどうにでもなるのだ。(p.237)

 

Lucius Annaeus Seneca(45)”De Ira”(兼利琢也訳(2008)『怒りについて他二篇 』岩波文庫。)より

【判断】はたして怒りは判断によって始まるのか、それとも衝動から始まるのか、と言うことである。(中略)怒りは単に動くのではない。暴走するのだ。突発的な衝動だからである。(pp.130,134)

【遅延】怒りに対する最良の対処法は、遅延である。(p.174)

【反応】(ディオゲーネスの逸話)私は全く怒っていない。怒るべきかどうかは、まだ考えが定まっていないが。(p.256)

 

 

また、「厳しい競争環境が既に目前にある場合は本書の考え方は適応させにくい」「戦場で落ち着くと焼かれてしまう」との指摘もあった。そうかもしれない。「それサバンナでも同じこと言えんの?」を思い出した。