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【雑談3】幻のFラン大学での思い出

LEC東京リーガルマインド大学(通称:LEC大学)を知る者は少ない。それもそのはず。2004年に開学し、2010年には募集を停止した大学である。小泉-竹中路線の規制緩和構造改革特区の一環で「株式会社立大学設立」の流れで開学し、キャンパスは日本全国14ヶ所に点在した。いわゆるFラン大学だが、募集期間わずか6年で廃校となっている。異例の速さで廃校。「日本で最も(そして圧倒的に)必要とされなかった大学」と定義して差し障りない。存在そのものが知られていない。まさに幻のFラン(兼/日本一のFラン)と言える大学であり、僕の母校でもある。

 

 

高校を卒業後、僕はフリーター生活を満喫していた。事故入院で国立二次が受験出来ず卒業し(受験しても落ちていたと思う)サッカーやアルバイト中心の生活をしていた。当時は京大(物工)を志望していたが、よく考えてみると研究者になりたいわけでもなかったし「別にこのまま大学行かなくてもいいかな」という感じもあった。とはいえ、「一度目指したので合格はしておこうか」と思いなおして受験したら運良く合格することができた。同じタイミングで開学したばかりのLEC大学を知る。


LEC大学は非常に怪しい大学だった。所属していたサッカーサークルの友人や先輩は「せっかく合格したのだから」と京大進学を推奨した。そう勧める意味や理屈は理解できたが、目の前にこれほど怪しい大学が現れてしまった以上は行くしかないと思った。(授業料も全免だったし)人生は一回きりである。友人の竹下君が会計士を目指すと聞いていたので自分もLEC大で会計士資格を取っちゃえばいいか、と軽く考えたりもしていた。


「会計士資格を取っちゃえばいい」というアイデアが誤算とわかるのに多くの時間は必要なかった。簿記が嫌いと判ったためだ。3級の時点で早々に「自分には合わない」と強く感じた。その後の大学生活で「勉強」の文字は僕の辞書から消えた。日本一のFラン大学で何の勉強もせずにダラダラと過ごした。様々なことについて深く考えずに「なんとかなるだろう」という捉え方だった。

 

 

学歴は一定程度ラベルとして機能する。能力を示す指標となるし、周囲の期待値に直結する。状況によっては便利だし、場合によっては不可欠である。特段の理由が無いのなら、あった方が良いと思う。(怪しい大学をついうっかり見つけてしまったことが「特段の理由」にあたるかどうかは価値観に個人差がある)


Fラン大なので就活は苦労すると予想した。実際には楽しんでいるうちに終わった。リーマンショック直前の好景気だったのも運が良く、複数の大手企業から内定を得た。おどろいたのは面接で簿記が嫌いと「明言」したにもかかわらず、それを「謙遜」と誤解釈した企業から「経理職」としてアサインを受けたことだ。意味不明な申し出に対し興味を抱き、その会社に就職することにした。


就活では出会いもあった。インターンシップで同じグループになった女の子がLEC公務員講座に通っていたのである。そのことがきっかけで共通の話題(LEC)が発生して仲良くなった。この女の子とはしばらくしてから付き合うようになり、のちに結婚 する ことになる。

 

 

ジョブズは「コネクティング ザ ドッツ」(点を繋げる)の重要性をスピーチしている。一方で僕は点を打っていないのに「それっぽい線」をひくことができた。きれいな線なので、あたかも「点」が存在したような気になる。実際はストーリーも戦略も無い。努力も放棄していた。ただ運が良かった。奥さんとの縁もあったし、話のネタもできた。総じて幻のFランはいい大学だったと思う。


学歴や資格、お金やコネなどは(多分)あるに越したことは無い。ただし無いなら無いなりに楽しく過ごすことに注力すると運が味方してくれることが多いという所感を得た。