THINK DIFFERENT

FESTINA LENTE

グレッグ・マキューン(2021)『エフォートレス思考』かんき出版。

◆概要

【執筆動機】

頑張ってもうまくいかないなら、別の道を探した方が良い。(p.15)

 

【リサーチクエスチョン】

本質的なことだけに人生を絞り込み、しかしそれでも多すぎるときには、どうしたら良いのだろう?(p.21)

 

【想定読者】

真面目に頑張っているのに、何故かうまくいかない。やる気はあるのに、成果が出ない。なんだか疲れるばかりで、前に進めない。(p.16)

に当てはまる人。

 

【主張】

限界を超えて頑張るのではなく、もっと簡単な道を選んでみたらどうだろう?(p.18)

エッセンシャル思考は何をやるかを教えてくれた。エフォートレス思考はどのようにやるかを極める技術だ。(p.25)

頑張らないのに結果を出す。いや頑張らないからこそ結果が出せる。(p.27)

 

◆本文抜粋

○全体像

○精神

人の脳は、困難な事を避けて、簡単なことを好むようにできている。(p.47)

楽をするのが後ろめたく感じるほどに、努力の価値は過大評価されている。(p.48)

どうすれば簡単にできるだろう?と考えて頭をリセットする。(p.53)

 

成功するために心身を酷使して働かねばならないと言うのは、私たちの社会の集団幻覚だと思います。(p.57)

 

やらなくてはならないのに、やる気が出なくて先延ばしにしてしまうこともあるはずだ。(中略)工夫次第で、楽しくすることは可能だ。(p.64)

 

仕事と遊びを分けるのは、健全な態度ではない。(p.66) 退屈なタスクにちょっとした遊びを加えるだけで、タスクそのものが楽しみに変わるのだ。(p.76)

memo.ホモルーデンス

 

習慣について書いた書籍は多いが、儀式について論じる書籍は少ない。(中略)儀式は行動に意味を与える。(pp.74-75)

 

儀式とは私たち一人ひとりの内面的な習慣であり、魂のこもった習慣なのだ。儀式をうまく使えば、面倒なタスクは、ときめきに満ちた体験となる。(p.76)

 

不平不満は、簡単で価値のない物事の典型だ。(p.82)拡張、形成理論と言う心理学の理論によれば、ポジティブな感情は良い影響どんどん広げる性質がある。(p.85)

 

(怒りについて)ゆっくり雇い、素早く解雇しましょう。(p.93) memo.セネカ

十分な睡眠をとれば、頭がクリアになり、エフォートレスの精神が戻ってくる。(p.111)

 

○行動

あるポイントを超えると、努力の量を結果に結びつかなくなる。むしろ、パフォーマンスが低下する。経済学ではこれを収穫逓減の法則と呼ぶ。(p.132)多くの人は、アウトプットの低下を努力の量で補おうとする。(p.133)

 

2.5秒が未来を変える(p.152)

Xを頼まれた場合、Yをする必要は無い。(p.161)

早く着くためにゆっくりと進む。(p.180)

memo.festina lente

 

複雑なものを分解するのではなく、気づかれていない単純なものを利用して成功する(p.167)

 

○仕組み化

特に考えなくても習慣的に行動できる人は、累積的な行動を身に付けている。(p.198)

累積的な成果を得ようと思うなら、原理原則に目を向けなければならない。(p.205)

 

正しいことを一度だけ学ぶ(p.206)

できるだけ多くの重要な行動を自動化すべき(p.231)

 

読書は、この世で最もレバレッジの高い活動だ。(p.215)本が古ければ古いほど、その本が将来にわたって生き残る可能性が高いこれをリンディ効果という。(中略)古典を積極的に読んでみよう。(p.216)

 

楠木建(2016)より【無努力主義の原則】

質量ともに一定水準以上の「努力」を継続できるとすれば、その条件はただ一つ、「本人がそれを努力だとは思っていない」、これしかないというのが僕の結論でありまして、これを私的専門用語で無努力主義と言っています。客観的に見れば努力投入を継続している、しかし当の本人は主観的にはそれをまったく努力だとは思っていない。これが理想的な状態。無努力主義の本質は「努力の娯楽化」にあります。(p.164)

 

天才は別ですよ、天才は(例として、ブルースギタリストのデレク・トラックス)。天才は才能の赴くままにスキなことをスキなようにしていればよいだけの話で、無努力主義も原理原則もへったくれもございません。そんなことをいちいち考えなくても、すべてを自然に、矛盾を矛盾のまま矛盾なく乗り越えられるのが天才です。ただ、僕は幸か不幸かフッーの人だったので(たぶん幸)、「努力しなきゃ、と思った時点で終わっている。次行ってみよう」の無努力主義を意識的に標傍することによって、何とか社会との折り合いがつく仕事をできるようになったという次第でございます。(pp.165-166)

 

◆参考文献・引用元

Greg Mckeown(2021), "Effortless: Make It Easier to Do What Matters Most" Currency.(高橋璃子 訳(2021)『エフォートレス思考    努力を最小化して成果を最大化する』かんき出版。)

Johan Huizinga(1938) "Homo Ludens" (里見元一郎 訳(1974)『ホモ・ルーデンス河出書房新社。)

楠木建(2016)『好きなようにしてください たった一つの「仕事」の原則』ダイヤモンド社

 

◆所感(BJ後追記予定)

「努力は逃げ」という風潮が台頭して久しい。かつて美徳とされた努力に対する価値観は「容量の悪いヤツのオハコ」と言わんばかりの雰囲気を感じる。安宅 (2010)でも無駄な方向の努力/根性は「犬の道」と揶揄され、もはや人扱いされておらず、とげとげしさすらある。

 

 

「嫌なこと」への耐性が無い人は、ほぼ必然的に「好きなこと」しか出来ない。そういう性質の人は、天才でない限りは、(可能な限りで)好きなことの範囲を広める工夫を要する。「普通これくらい耐えれるやろ」のハードルが越えられないのも案外困る。その点、努力/耐える力は否定されるものではない。本書では努力の弊害ばかりが目につくが、行き過ぎてはよくないと思う。