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FESTINA LENTE

【マラソン】FESTINA LENTE/急がないから早く着く


《イントロダクション》
「フルマラソンは30㌔から急激に足が重くなる」
「30㌔からが地獄!でも達成感はひとしお!」
「後半ペースダウンしないために練習しないと!」
「練習不足だったから後半歩いちゃった」

こうした声をよく聞く
実際、30㌔以降ほとんどすべてのランナーがペースダウンする
ただのペースダウンではない
大幅なペースダウンをする
前半コツコツと稼いだ時間の貯金を、最後の10㌔で吐き出す
完膚なきまで吐き出す
たいていは吐き出しきれず借金をする

最初は軽快に走っていた人が
後半はトボトボと苦しそうに走る(歩く)
よって、苦しい思いをしたのにタイムは遅い
苦労がタイムで報われない

ではどうすべきだったのか
もっと練習すればよかった?
もちろんそれもあるだろう
しかしここでするのは、そういう話ではない
もっと簡単な話
前半のペースが早すぎる、だから失速する
その件についてである

前半飛ばし過ぎると後半苦しいのは当たり前のこと
それは練習が不足していたせいではない
そう考えている人はいつまでも苦しいレースを強いられる
いくらお金があっても散財したら貯金がなくなるのと同じ
もっとお金があれば、、と考える人はたいていいつまでも貧しい
考え方を改める必要がある
不足しているのは練習では無く、自身の走力への理解
リテラシーの問題

ダラダラと書いてきたがここで、結論をのべる
(もうほとんど書いたも同然だけど)
楽しく、楽して、いいタイムでマラソンをゴールするためには
●「ペースの計画を立てる必要がある」
●「前半を抑えて、後半(特に30㌔以降)ペースアップする計画である」
●「すると後半ペースダウンした大勢をごぼう抜きできる」
とてもシンプルな話

要は、前半いかに「ゆっくりと走るか」がポイントである
ゆえにここではそうした走りを【前半ゆっくり走】と命名する
 


《【前半ゆっくり走】に向かない人》
●楽して成果を得るのが嫌いな人
●せっかちな人、他人と比べてあせる人
●苦しいのが大好きな人
●30㌔以降の地獄がマラソンの醍醐味だと思う人
●はやくゴールにつかなくていいと考える人
●苦しさで得られる「達成した感*」を得たい人
*僕は「達成した感」と「達成感」を区別して考えています

 

 

《【前半ゆっくり走】で実現すること》
●30㌔以降失速したランナーをごぼう抜きできる
●疾走してゴールするので楽しい
●結局、はやくゴールできる(達成感を得る)
●楽しくゴールするので「達成した感」は弱い

 

 

《前半戦に潜むトラップ/罠》
ラソン大会当日は誰にとっても
テンションが上がるものである
会場の雰囲気が「走るぞ」という雰囲気に包まれているし
吹奏楽の生演奏や、和太鼓、チア、沿道の声援もある
初心者は号砲からスタートラインを切るのに5-10分かかる
気持ちが高まる、はやる、あせる
あらゆる要素で舞い上がってしまいがち

それは自分だけに起こることではない
まわり全員がその空気にのまれる
ゆえに、まわり全員が前半とばす
腹タプのおっさんもとばす
だから自分も「ついていかねば」と感じやすい
抜かされると、対抗心が燃えてしまう

そしてなにより問題なのは
ラソン当日はたいてい仕上がりがいい。笑
色々と気を使って過ごした数日の成果を当日の朝に感じがち

●「前日は風呂上りに柔軟体操もしたし、うどんも食べた!」
●「十分な休養も取ったしアミノなんちゃらも飲んだ!」
●「ゆえに足がいつもより軽い!今日はいけるぞ!」

そういう思い込みに陥りやすい
それがトラップ/罠だとも知らずに
30㌔を過ぎてトボトボと歩く自分の姿など
1㍉たりとも想像することができない
このへんがトラップ/罠のこわいところである

このトラップ/罠の構造をまずもって理解する必要がある

 

 

《【前半ゆっくり】のむつかしさ》
人は他人のペースに流されやすい
とくに、集団の流れに逆らうのは容易ではない
はやい集団の流れにさからって「ゆっくり走る」のは想像以上に難しい
なにより、足が軽い前半はその必要を感じにくい
これがおおきなトラップ/罠というのは前述の通り

しかし不思議なもので、どんな大会でも
前半飛ばして後半トボトボ歩く人が本当に多い
集団で突っ込み、集団でペースダウンする
僕はかつてはこれを【遅い人特有の現象】と思っていた
だが実はそうではないことがわかる
サブ4を達成した時も、まわりは恐ろしくペースダウンしていた
とにかく、30㌔からみんなペース落ちすぎ!なのだ

ネガティブスプリットを心がけている
サブ3ランナー数人に聞いてみたが
サブ3.5前後のランナーでも30㌔以降ペースダウンし
前半の貯金を食いつぶす系のランナーは多いという

そんな人たちが、ベストタイムを出した時のことを聞くと
「前半抑えることが出来たレース」という
では、どうしてその日は抑えることが出来たのか、と聞くと
「足が重く、今日は記録が狙えそうにない」と感じて抑えたという
「調子が悪かったが、結果的に楽にタイムが出た」という感覚だという

気持ちよくゴールを駆け抜けて
「疲れたけど、まだ余裕がある。前半もう少し飛ばしてもよかったかもな」
と感じるくらいがちょうどいい塩梅なのかもしれない。

 

 

《【前半ゆっくり】をイメージする》
鮮明にイメージすることがまずは肝要だ
【前半ゆっくり走】を心がけるとなにが起こるか

スタートから10㌔くらいにかけて、ほんとうに大勢の人に抜かされる
自分よりも遅そうな人にも抜かされる
そこを無視するイメージを持つ

調子がいい自覚があっても、自分のペースを守ることが大事だ
20㌔くらいから周りのペースが落ちてくる
25㌔ではその傾向がいっそう顕著になる
30㌔以降は周りが止まって見える
自分は一定のペースだったとしても、だ

こうした現象はおそらく、フルマラソンに限った話ではない
上達を必要とする多くの物事に応用可能な汎用性のある考え方と感じる

●「楽しんでこつこつと積み上げていけば、自分のポテンシャルをフルに発揮しやすい」
●「結果的に同じポテンシャルを持つたいていの競争相手に、方法論のみで勝つ」
●「苦しいのに結果が出ない」を回避できる
●「楽しいうえに結果が出る」の感覚を持つことが出来る

 

 

《自分にとっての【前半ゆっくり走】を探す》
【前半ゆっくり走】のペースは人によって異なる
㌔8分の人もいれば㌔4分の人もいる
ゆっくりであればあるほどいい、という話ではない

【前半ゆっくり走】は相対的な概念であり
とうぜん個人差もあるためだ
重要なのは、自分にとっての【前半ゆっくり走】をみつけること
概念、あるいは象徴としての【前半ゆっくり走】
つまり挫折しないペースを探すこと
ゆっくりでも足を止めず、目的地まで辿り着くペースを探すこと
*自分のペースの見つけ方/セオリーはにろたさんのブログをご参照 

フルマラソンの制限時間は6時間ということが多い
6時間でゴールするには㌔8分等速で走る必要がある
●㌔8分⇒5時間40分+スタート/トイレロス等=6時間ギリ
が基本的な考え方である。

しかし人によっては、㌔8分がきつい場合がある
そういう人の練習は㌔10分以上でもいい
歩くより遅いジョグをするのがいい
もっというと、歩いてもいい
楽して「足をつくる」ことが肝要だ

逆に「㌔8分を楽に感じるために、㌔7分や㌔6分で頑張る」
という練習は、実は遠回りである。
足が出来てないのに負荷をかけるから怪我もしやすい。
なによりしんどい。つらい。
走ることが楽しくない。
だから続かない。続かないからはやくならない。

FESTINA LENTE
初代ローマ皇帝アウグストゥスの格言で
「ゆっくり急いで」とも訳される
急がば回れ」とは似て非なるものだと僕は捉えており
それゆえ好んでいる
“ゆっくりだから、結果としてはやく目的地に着く”
という「ゆっくりを積極的に肯定する」意図がみえるためだ
ゆっくりは、早い

 

 

《さいごに》
走る練習をほとんどしていないのに
3カ月でタイムを約100分縮めてサブ4を達成できたのは
まず、第一にハンマーの存在 が大きい。
*11月仙台5h40m⇒2月熊本3h59m

次に大事だったのは
●「マラソン大会を楽しいとみなした」
ことである。
楽しいからやめない。
やめないから成長する。

ではなぜ楽しかったか、と考えたところ
●「一定のペースで走った」
●「だから後半しんどくなかった」
●「そのため後半周囲をごぼう抜きにできた」
●「後半の苦しさを回避した」
総じて、【前半ゆっくり走】を心がけたのが良かったといえる。

趣味のマラソンは早く走れば走れるほどいい、というものではなく
その時々によって、自分が気持ちよく走り切れるペースを模索して
気分良くゴールを切ることが大切だと思う
タイムは二の次(この考えは結果論としてタイムも出やすい)
自分のポテンシャルを【楽しく出し切る】という感覚をもつことが
ラソンの醍醐味だと思うし
今後もそういうランを楽しんでいきたい

 

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●参考文献
小出義雄(2013)『30キロ過ぎで一番速く走るマラソン サブ4・サブ3を達成する練習法』角川新書。
*読んでいませんが、「あらすじ」から察するに上記と似たようなことが書いているような気がします。


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