◆概要
【執筆動機】
具体性という意味での「わかりやすさ」に対して疑問を投げかける(p.2)
【想定読者】
①抽象概念を扱う思考力を高めて、発想力や理解力を向上させたいと思う読者(p.3)
②周囲の「具体レベルにのみ生きている人」とのコミニュケーションギャップに悩んでいる人(p.4)
【主張】
人間の知性のほとんどは抽象化によって成立している(p.3)、をふまえ「具体と抽象の往復」(p.15)の重要性を理解する必要がある
◆本文抜粋
- 序章 抽象化なくして生きられない
【目的】「抽象」と言う言葉に対して正当な評価を与え、「市民権を取り戻す」こと(p.14)
- 第1章 数と言葉
【まとめる】数と言葉を成立させるためには「まとめて同じと考える」ことが不可欠(p.20)
- 第2章 デフォルメ
【抽象化とは】「枝葉を切り捨てて幹を見ること」「細部を切り捨てて特徴を抽出する」(pp.26.27)
- 第3章 精神世界と物理世界
【精神と抽象】抽象化によって人間の精神世界が何十倍にも広がっている(p.31)
- 第4章 法則とパターン認識
【アカデミア】アカデミックな知も、抽象化という形で「表面上異なる複数の事象を同じに扱う」ことで発展してきた(p.35)
- 第5章 関係性と構造
【抽象と似顔絵】具体のレベルは、基本的に「個別・バラバラ」の世界です。(中略)図解は、「世の中の事象の関係性」の「研ぎ澄まされた似顔絵」といってもいい(pp.37.39)
- 第6章 往復運動
【コツ】「共通点と相違点」を適切につかんでいることが抽象化、ひいては例え話の出来栄えを決定する(p.42)
- 第7章 相対的
【手段と目的】目的一つに対して手段は複数という形で階層が成立しますが、目的は常に、さらに抽象度の高い「上位目的」が存在します(p.47)
- 第8章 本質
【抽象と本質】抽象度が上がれば上がるほど、本質的な課題に迫っていく(p.57)
- 第9章 自由度
【自由と抽象】その人の好む「自由度の大きさ」を考慮する必要。(p.62)memo.丸投げ/高い自由度、捉え方
- 第10章 価値観 ●第11章 量と質
【上流と下流】「質の上流VS量の下流」という視点もあります(p.69)
- 第12章 二者択一と二項対立
【二項対立】早退する2つの概念を比較して考える手法(p.78)
- 第13章 ベクトル ●第14章 アナロジー
【抽象のマネ】具体レベルの真似は単なるパクリでも、抽象レベルで真似すれば「斬新なアイディア」となります。(p.88)
- 第15章 階層 ●第16章 バイアス
- 第17章 理想と現実
【感情と具体】人間は、個人レベルでは感情で動くことがほとんどですから、集団での目標を達成するためには、感情に訴えることが不可欠です。そのような場合必要なのは具体例、個人的な体験やストーリーということになります。(p.107)
- 第18章 マジックミラー
- 第19章 一方通行 ●第20章 共通と相違
「具体的すぎてわかりにくい」こともある(p.121)
抽象レベルを上げれば、「同じである」と捉えられる範囲が広がります(p.125)
- 終章 抽象化だけでは生きにくい
◆参考文献
細谷功(2014)『具体と抽象』dZERO。
◆所感
有名な料理家である海原雄山先生は冷やし中華について「あんな下等な物」とあきらかに見下す発言をしている。
一方で、「中華料理」(抽象)としての「冷やし中華」(具体)という位置付けでは「作り方によっては」と条件付きで評価している。これらの発言は、「雄山の矛盾」として美味しんぼ界隈ではネタとされているが、実は「具体と抽象の往復」を利用した見事な釣り、という見方も可能である。
このように、抽象のフィルターを通すことで、具体の評価が変わることはありえる。たとえば、「人物Aを好きではない」と「映画俳優としての人物Aは好き」は両立しうる。したがって、海原先生は矛盾しない、、、、、と思いきや
中華料理としての冷やし中華もしっかり否定していました。