THINK DIFFERENT

FESTINA LENTE

細谷功(2014)『具体と抽象』dZERO。

◆概要

【執筆動機】

具体性という意味での「わかりやすさ」に対して疑問を投げかける(p.2)

 

【想定読者】

①抽象概念を扱う思考力を高めて、発想力や理解力を向上させたいと思う読者(p.3)

②周囲の「具体レベルにのみ生きている人」とのコミニュケーションギャップに悩んでいる人(p.4)

 

【主張】

人間の知性のほとんどは抽象化によって成立している(p.3)、をふまえ「具体と抽象の往復」(p.15)の重要性を理解する必要がある

 

◆本文抜粋

  • 序章   抽象化なくして生きられない

【目的】「抽象」と言う言葉に対して正当な評価を与え、「市民権を取り戻す」こと(p.14)

 

  • 第1章   数と言葉

【まとめる】数と言葉を成立させるためには「まとめて同じと考える」ことが不可欠(p.20)

 

  • 第2章   デフォルメ

【抽象化とは】「枝葉を切り捨てて幹を見ること」「細部を切り捨てて特徴を抽出する」(pp.26.27)

 

  • 第3章   精神世界と物理世界

【精神と抽象】抽象化によって人間の精神世界が何十倍にも広がっている(p.31)

 

【アカデミア】アカデミックな知も、抽象化という形で「表面上異なる複数の事象を同じに扱う」ことで発展してきた(p.35)

 

  • 第5章   関係性と構造

【抽象と似顔絵】具体のレベルは、基本的に「個別・バラバラ」の世界です。(中略)図解は、「世の中の事象の関係性」の「研ぎ澄まされた似顔絵」といってもいい(pp.37.39)

 

  • 第6章   往復運動

【コツ】「共通点と相違点」を適切につかんでいることが抽象化、ひいては例え話の出来栄えを決定する(p.42)

 

  • 第7章   相対的

【手段と目的】目的一つに対して手段は複数という形で階層が成立しますが、目的は常に、さらに抽象度の高い「上位目的」が存在します(p.47)

 

  • 第8章   本質

【抽象と本質】抽象度が上がれば上がるほど、本質的な課題に迫っていく(p.57)

 

  • 第9章   自由度

【自由と抽象】その人の好む「自由度の大きさ」を考慮する必要。(p.62)memo.丸投げ/高い自由度、捉え方

 

  • 第10章   価値観   ●第11章    量と質

【上流と下流】「質の上流VS量の下流」という視点もあります(p.69)

 

  • 第12章   二者択一と二項対立

【二項対立】早退する2つの概念を比較して考える手法(p.78)

 

  • 第13章   ベクトル   ●第14章    アナロジー

【抽象のマネ】具体レベルの真似は単なるパクリでも、抽象レベルで真似すれば「斬新なアイディア」となります。(p.88)

 

  • 第15章   階層   ●第16章    バイアス
  • 第17章   理想と現実

【感情と具体】人間は、個人レベルでは感情で動くことがほとんどですから、集団での目標を達成するためには、感情に訴えることが不可欠です。そのような場合必要なのは具体例、個人的な体験やストーリーということになります。(p.107)

 

  • 第18章   マジックミラー
  • 第19章   一方通行   ●第20章    共通と相違

「具体的すぎてわかりにくい」こともある(p.121)

抽象レベルを上げれば、「同じである」と捉えられる範囲が広がります(p.125)

 

  • 終章   抽象化だけでは生きにくい

 

◆参考文献

細谷功(2014)『具体と抽象』dZERO。

 

◆所感

有名な料理家である海原雄山先生は冷やし中華について「あんな下等な物」とあきらかに見下す発言をしている。

一方で、「中華料理」(抽象)としての「冷やし中華」(具体)という位置付けでは「作り方によっては」と条件付きで評価している。これらの発言は、「雄山の矛盾」として美味しんぼ界隈ではネタとされているが、実は「具体と抽象の往復」を利用した見事な釣り、という見方も可能である。

このように、抽象のフィルターを通すことで、具体の評価が変わることはありえる。たとえば、「人物Aを好きではない」と「映画俳優としての人物Aは好き」は両立しうる。したがって、海原先生は矛盾しない、、、、、と思いきや

中華料理としての冷やし中華もしっかり否定していました。