◆概要
12年ほど前、ソフトバンクアカデミアの開講式で孫正義氏が「孫の二乗の兵法」という講題でスピーチをされた。以下はそのメモ(走り書き)である。動画リンク後述。
◆講演全体像
◆個別解説
道 ・・・ 理念、志
デジタル情報革命で人々を幸せにする
天 ・・・ 天の時、タイミング
情報のビッグバンという絶好のタイミング
農業革命、工業革命、情報革命
地 ・・・ 地の利
インターネット人口はアジアが50%に
将 ・・・ 優れた将を得る
大将としての器を得る
大将になる為には、志を共有する将が10人必要
法 ・・・ システム、方法論、仕組み、ルール作り
まぐれ当たりで得た果実は継続性が無い
物事をシステマティックに考える
頂 ・・・ 頂上、頂上から見渡した景色を登る前に想像する
自分が登るべき山を決める、決めると人生は半分決まる(勝利が半分決まる)
10年後、20年後、30年後と明確な期限を決めイメージを徹底的に思い描く
ビジョンは2-3日考えて浮かぶようなものではない
普段からちぎれるほど考え抜くことが必要
情 ・・・ 情報を収集し、徹底的に分析する
「これだ、これをやれば絶対に日本で一番になれる」
行き当たりばったり、たまたまの経緯で決めたではダメ
略 ・・・ ビジョンを達成するためにどのような戦略を立てるか
頂上を見てビジョンを立てる、情報を集めてビジョンを立てる、ビジョン実現のために戦略がある
略する、絞り込まれたものでないと戦略ではない
七 ・・・ 三割以上のリスクは冒さない、七割以上勝つという絶対的確信を持てる場合勝負する
「絶対に行ける7割」が大切、いい加減はダメ
五分五分で挑むのはバカがやること
ケチな奴ほど失ったものを取り戻そうとして会社をつぶす無能
意地でやるやつはバカ、退却できないやつはバカ
三割以上の損失が発生しそうな時は迷わず瞬間芸でスパーンと切る
九割の確率になるまで待つと手遅れ
闘 ・・・ 七割以上勝算があるという事業を絶対にやり抜く
闘って初めて事を成す→実行することが重要
闘って、闘って、闘い抜いて、人々を幸せにするという理念を実現させる
闘い=ビジョン、高い志を実現させるためには多少の迷惑もやむをえない場合もある
一 ・・・ 圧倒的ナンバーワンでないと利益が創出されにくい
プラットフォームを作る、業界標準、デファクトスタンダードを作る
勝てる戦いしかしない、戦えば必ず勝つ、その分野で圧倒的ナンバーワンになる
一番を取り、負け癖を勝ち癖に変える。一番でないと気持ちが悪いと思えるようにする
二番は敗北だと思え。二番でちょっと喜ぶなどその時点で失格。
一番になればそこからゆとりが生まれて、より責任を持った事業が出来る
流 ・・・ 時代の流れには絶対逆らってはいけない
沈みゆく産業に人生を掛けるなんてバカだ
ニッチを狙え、というコンサルタントはバカ。
ニッチを選択して勝つのではなく、本流となる分野を選びマーケットが小さくとも投資する
一時的にその部分が半年くらい優れているとか、そんな隅っこの話をしても全く意味が無い
将来メインになるところで戦うのが怖くて、勝てる自信が無くてニッチを狙うのは負け犬
安いから買う、組みやすいから組むではだめ。将来のメインストリームをみすえる
攻 ・・・ 攻撃は最大の防御、技術に詳しく、営業も天下一品、交渉させても説得力がある
強く、深い洞察力を持ち、常に攻撃力を磨かなくてはいけない
守 ・・・ 資金繰り、経営管理、撤退、コンプライアンス、報道リスク
天下りを受け入れるのは法律違反ではないが人的賄賂にほかならない。
そういった意味でも、「守り」は真剣に考えなくてはならない
群 ・・・ 30年以内に5,000社の同志的結合集団を作る、戦略的シナジーグループ
自立していて、分散していて、協調する組織をつくる
シングルブランド、シングルビジネスモデルの危うさをヘッジ
智 ・・・ 思考力、グローバル交渉力、プレゼン能力、テクノロジー、ファイナンス、理解力
どれもその分野の専門家と一番深いレベルの議論が出来る能力が必要
「頼る」と「使いこなす」は違う。最高の専門家を使いこなす素養を身につける
信 ・・・ 信義、信念、信用を持っていないと同志的結合を集められない。
裏切られる気がする、という疑念のもとで5,000社は集めきれない。
仁 ・・・ 仁愛敬徳、仁義ではなくて仁愛
人々の幸せの為、という仁愛の精神。
勇 ・・・ 大きな敵と戦う勇気、撤退の勇気
退却の勇気が無いリーダーは失格。退却は進行の10倍難しい
退却の決断はトップしかできない
退却する時は自分がすべて泥をかぶるくらいの覚悟が必要
厳 ・・・ 泣いて馬謖を切るということ
深い仁愛があってはじめて出来ること
風 ・・・ 疾(と)きこと風の如く
移動するときは風のように速く
林 ・・・ 徐(しず)かなること林の如し
林のように静かに、敵の近くでも見破られないように
火 ・・・ 侵掠(しんりゃく:おかしかすめる)すること火の如く
攻撃するときは火のように勢いに乗じて
(陰) ・・・ 知りがたきこと陰の如く
どのような動きに出るか判らない雰囲気は陰のように
山 ・・・ 動かざること山の如し
敵の奇策、陽動戦術に惑わされず陣形を崩さない、まさに山のように
(雷) ・・・ 動くこと雷霆(らいてい)の如し
攻撃の発端は敵の無策、想定外を突いて雷のように敵方を混乱させながら実行されるべき
海 ・・・ 戦いに勝った相手を包み込むこと
海のようにすべてを飲み込んだ平和な状態まで持っていって初めて戦いは完結する
◆書籍より抜粋
【守→攻】昔の戦いに巧みであった人は、まず誰にも打ち勝つことのできない体制を整えた上で、敵が誰でも打ち勝てるような体制になるのを待った。(p.56)
【勝算を整える】勝利の軍はまず勝利を得てそれから戦争しようとすれば、敗軍はまず戦争始めてから後で処理を求めるものである。(p.59)
【予兆】敵の群子の言葉つきがへりくだっていて守備を増強しているようなのは、進撃の準備である。言葉つきが強行で進行してくるようなのは、退却の準備である。(p.122)
◆参考文献・引用元・動画
孫武(前5C)『孫子』(金谷治 訳(2000)『新訂 孫子』岩波文庫。)
★ソフトバンクアカデミア開校式(9分-講義)
https://group.softbank/news/webcast/792895473001
◆所感、追記予定
兵法書であり、経営戦略指南書であり、人生訓示書の側面もある世紀のベストセラー。解釈に多義性はそれほど無いわりには、本書を愛読して失敗する経営者やリーダーは少なくない。継続的な理解深化が必要である。